位相ベース DAS:リアルタイムインフラインテリジェンスを実現する分布型音響センシングの進化
分布型音響センシング(DAS)は、インフラを大規模に監視および保護するための重要なツールとなっています。導入が進むにつれ、単なる検知にとどまらず、より高い精度、より正確なイベント識別、そして誤報の削減が求められるようになっています。この進化により、DAS 技術の次のステップとして、VIAVI の特許取得済みのトゥルフェイズ DASのような位相ベース DASの採用が進みました。
位相ベース DAS は、既存の DAS アプローチに取って代わるものではなく、それらを基盤として、より正確で定量的な知見を提供し、新たなアプリケーションや、より確信を持った運用上の意思決定を可能にします。
位相ベース DAS:DAS 技術の進化
位相感応型 DAS、位相 DAS、または定量的 DAS とも呼ばれる位相ベース DAS は、新しいセンシングカテゴリーではなく、従来の DAS 技術を発展させたものです。従来の強度ベースの DAS システムが後方散乱光強度の変化を検出するのに対し、位相ベース DAS はレイリー後方散乱信号の光位相を測定します。
VIAVI のトゥルフェイズ DAS は、位相ステップ干渉法などの特許取得済み技術を用いた光位相復元により、高忠実度のセンシングを実現します。
光位相を復元することで、システムは単なる外乱の検出にとどまらず、定量的な測定が可能になります。トゥルフェイズ DAS を使用すると、ひずみ、振動振幅、周波数、真の音響出力といった物理パラメータを直接測定できます。その結果、再現性、客観性、および導入環境を問わない比較可能性に優れた、高忠実度データが得られます。
位相ベースの測定が重要な理由
光位相を復元できることで、以下のようないくつかの重要な利点が得られます。
- 感度の向上により、より微弱な音響信号の検出が可能
- より広い使用可能周波数帯域により、より多様なイベント種別に対応
- 背景ノイズに対する耐性向上により、ノイズ環境下での性能が向上
- 特に移動対象や近接したイベントに対する、より正確な位置特定とトラッキング
これらの特性は、誤報を抑えながら検知率を向上させることに直結しており、これは大規模かつ常時稼働する監視システムにとって不可欠な要件です。
とはいえ、強度ベースの DAS も依然として重要な役割を果たしています。高振幅環境や、識別や分類ではなく検知そのものを目的としたユースケースでは、強度ベースのシステムが効果的かつ経済的な選択肢となり得ます。位相ベース DAS は、DAS の適用範囲を拡張し、精度、識別能力、信頼性が極めて重要となる用途を可能にします。
業界全体に広がる DAS の用途
近年、DAS の用途は大幅に拡大しています。当初は主にパイプラインや境界監視向けツールとして利用されていたものが、現在では以下のような幅広いインフラ用途へと広がっています。
- データセンターおよび通信ネットワークケーブルに対する脅威の検知
- 国境や重要区域周辺のセキュリティ監視
- パイプラインの漏洩検知から海底電力ケーブルの摩耗監視に至る、重要インフラの監視
- ケーブル状態監視、疲労評価のための動的ひずみ測定
新たなビジネスモデルも登場しています。従来の通信事業者は、新たな収益源を生み出すために、既存の光ファイバー資産を活用する方法を積極的に模索しています。一部の導入事例では、水道管などの都市インフラ付近を通る通信用光ファイバーから取得した DAS データを用いて漏水を検知・特定し、そのセンシングデータを近隣の公益事業者へ提供しています。このアプローチにより、事業者はすでに敷設されている光ファイバーから新たな価値を引き出すことができます。 同時に、従来の OTDR、温度、ひずみ、および音響監視を単一のファイバーコア内で実施できるようになっており、ダークファイバーリンクと運用中のファイバーリンクの両方に対応しています。この統合により、導入を簡素化しながら、より多くの知見を得ることが可能になります。
ネットワークエッジで融合するトゥルフェイズ DAS と AI/ML
DAS システムの高機能化に伴い、生成されるデータの量と情報量は飛躍的に増加しています。そのデータから最大限の価値を引き出すには、高度な分析技術、特に AI や機械学習が不可欠です。
最新の位相ベース DAS システムでは、通常、中央集約型 AI/ML モデルを通じて、何らかの形で AI や ML を活用するケースが増えています。これによりさらなる知見を得られる一方で、DAS の生データをバックホールする必要があるため、ネットワークリンク(容量、レイテンシ、稼働率)への負荷が増加します。また、基本的には後処理モデルとして動作するため、イベント識別やアラーム生成に遅延が生じる可能性があり、さらにシステム調整や試運転に要する時間も長期化します。
したがって、ネットワークエッジで AI/ML を直接実装することで、オンボード GPU 処理やリアルタイム動作する組み込みモデルを活用し、自律性向上と遅延低減を実現できます。数十年分の履歴データで学習した VIAVI のモデルは、集中処理や手動介入に依存することなく、イベントの自動検出、分類、およびトラッキングを可能にします。
ネットワークエッジで AI/ML を活用することで、データ転送要件を削減し、接続制約を緩和するとともに、試運転時間を最大 50% 短縮できます。モデルは自動的に更新・適応でき、プライベートクラウドまたは VIAVI 管理のクラウドエコシステムを通じて継続的な改善が可能です。
トゥルフェイズ DAS と AI/ML の統合価値
トゥルフェイズ DAS とエッジベース AI/ML の組み合わせにより、次のような具体的な運用上のメリットが得られます。
- 背景ノイズ下でのイベント検出精度向上
- 近接した複数イベントの識別精度向上
- イベントのより正確な分類およびラベル付け
- アラーム生成および応答時間の短縮
- 位置精度の向上と移動対象の確実なトラッキング
- 季節や環境の変化への自動適応
- 誤報の削減、運用負荷の低減、および出動成功率の向上
これらの機能により、DAS は単なる状況把握を超え、実用的なリアルタイムインテリジェンスへと進化します。
まとめ
デバイス内 AI および機械学習と、特許取得済みのトゥルフェイズ DAS 技術を組み合わせることで、FTH-DAS を搭載した VIAVI の DAS ソリューションは、リアルタイムインフラインテリジェンスに必要な、高度な測定精度と解析能力を実現しています。これにより、信頼性と応答速度が向上し、重要インフラ全体における次世代センシングアプリケーション向けの拡張性に優れた基盤が実現されます。
Douglas Clague は現在、VIAVI の光ファイバーフィールドソリューションのソリューションマーケティング担当マネージャーです。Doug は、光ファイバーとケーブルテクノロジーに重点を置き、通信業界をサポートするテストと測定分野で20年以上の経験があります。VIAVI 入社以前は、製造エンジニア、ソリューションエンジニア、事業開発マネージャーを歴任しました。Doug は、ファイバーとケーブルテクノロジーのトレンドに関する業界のパネルに数多く参加しています。彼は、ロンドンのブルネル大学で学び、電気電子工学の優等学位を取得して卒業しています。